― 霧がまだ晴れぬ中・昔を思い ―
[色んな打ち明け話を聞かされる中、
少年は特に打ち明けることなどなく時を過ごしていた。
父のことは――コリルスに流れ着いた事情を聞いてもなお商人だと思っている。
物心ついた時にはすでに商人だったのだ、無理からぬ話である。
ただ、実家を慮ったのか、父がどこから来たのかを濁しているせいで、
父の素性については今も憶測が飛び交っている。
貴族らしからぬ振る舞いのおかげで“どっかのごろつき”だの“海の荒くれ者”だの、
一部では言われたい放題、らしい。
コリルスに長くいたことがある者なら、少しは耳にしたこともあるか]