[ふさり、尻尾が揺れた。 相手の頬をペロリと舐め、 湿った鼻先を相手の顔に寄せていく。 ごめんね、なんて言ってやらんのだ。 言えばみんなに失礼だ。 生きる為に食べるのだから、 ありがとうの方がきっと言いたい事に近い。 それでも、それも言ってやらんのだ。 まだそれが言えるほど、大人じゃなかったから。 ごめんねもありがとうも無いまま、 ウルルルル………と喉で鳴き声を漏らす。 じっと彼の死を見守るその眼差しは 赤色ではなく、翠だった]*