[ディーンのこと、その他近況、それから。
空白を埋めるように話を重ねる中、話を出来なかった時期からこの時までの間のサシャの変化にも薄っすらと気付き始める。
それは成長と共に齎される自然の――過去の彼女の言葉を借りれば季節の変化にも似たものであり、また一方で、経験から得た全く異質の変化も入り混じっている。
彼女の両親の死、あの日の出来事は人伝にしか聞くことが出来なかったが、彼女を始めとする森の民だけでなく少年期のエドルファス自身の心にも深い影を落としているのだった。]
……兄さんには成すべきことがあるんだって。
それが何なのかまだ聞けていない。
でも、人の心を掴む強さと魅力を持った人だ。
サシャも知ってるように、森のクマさんのあり方を変えたように。
あれかな、「みちびく」ってことなのかな。
…とか、人が言うと安っぽく聞こえちゃうかも。
でも、兄さんについて聞きたいということは、
サシャ自身、似たようなことを何か感じたってことだろうし。
[木々の合間のその先、どこか遠くに向けていた視線を
傍らの娘に戻し、まだ幼い少年は小さく笑みを向ける。]