[食事の後、そこに残っていたのは雪へと根をはる血痕のみだっただろうか。ともすれば、発見されても彼の死亡が予測に留まる程度には、跡形も残っていなかった。“渇”きをため込み過ぎた反動だ。 その後己は、余韻すらなく、ヨアヒムの部屋内も含めて痕跡を抹消すると、自身の部屋へと戻っていった。顛末を知るヨアヒム辺りは、痕跡のなさに驚くこともあるかもしれない。もちろん、ニコラスの遺した手紙>>214については気が付いてなどいないが。 ――その日の月は、何故か黒ずんで見えた**]