そして、大臣ご本人に残された刀傷。
唯一の生存者であるアリー大尉の証言では、サーベルよりも刀身の細い、東国で《カタナ》と呼ばれる刀剣に見えたと。
……刀剣はその種類により攻撃を与えた者に残す傷の形状が変わってくる。
サーベルとカタナはかなり似ているらしい、反った刀身の片刃。しかし一番違うのは柄と鍔、……護拳だ。大臣を切った覆面の男が持つ刀剣には護拳がなかった。
間近で刀身を切り結んだアリー大尉の証言だ。
これが一つ。
賊が侵入時に護衛官であったアリー大尉に投擲した小刀による切傷面、衣類の破損。
投擲に使われるナイフは両刃であることが多いのに対し、これは片刃。
《カタナ》と対で使われることの多い《コヅカ》に類似している、と。
……よほど使用武器に拘りのある賊のようだ。