―回想:ポールに関する記憶―
[あれはもう随分と前の記憶だ。
ピアノの生演奏があると聞き、静かな地下のバーに立ち寄った。
地球人だった母親は、故郷である地球の音楽を好んでいた。
ふと、それが懐かしくなって。
ピアノの演奏者は、まだ若い男だった。
何曲かスタンダードナンバーを弾いた後、
最後に聴いたことのない曲を響かせ、カウンターの席に座った。
ピアニストとしての腕前は記憶にないが、
最後に聴いた曲は、とても気に入ったのを覚えている。
タイトルを尋ねたら、自分が作曲した曲だと教わった。
良い曲だと思ったが、あまり受けいれられなかったらしい>>188
まだ若そうなのに、苦労や苦悩しているらしい青年に
ま、まあそう落ち込むなよ!
よしじゃあ、俺がその曲のファン一号になってやるから。
とかなんとか。勝手に言って、何杯か奢ったのだったか]