[鉛で出来ていない心に彼の声が響く。>>212
強きを気取っても、人としての正しきは彼にある。
己が後退は万民の信に悖る。
個を殺し、場に響かせる朗々とした声。
生れ落ちたときから、神の独占欲にも似た血を携える彼。>>216
己は民の為たれと、生きる義務を背負い、創世の力に相対。]
男に褒められても余り嬉しくないのだが、喜んでおこう。
―――化け物同士では、余りに、浪漫が無い。
[冗句めかした相槌に併せて空を切る大鎌。
その太刀筋は剣を獲物とする己には読み難い。
曲刀を寝かせ、初撃として繰り出された風の刃を袈裟懸けに薙ぐ。
だが、風の影に隠れた黒き魔物を捉え損ねた。
剣先を下げさせた彼の戦術は、計算しつくされている。
舌打ちと共に、足裏で咄嗟に床を弾いて後方へ飛ぶも、
金の髪が幾らか散って、胸に浅い朱が走った。]