― 箱舟 ―[黙示の天使と天軍の長が降り立ったころには、既に肉体の鼓動は止まっていた。意識だけが名残のように留まっていたが、それも間もなく離れるだろう。小さな繭の中には、静寂が満ちていた。それでも光の集まるを感じてか、繭の糸が淡く明滅した。息づくように。嬉しいと囁くように。眠る赤子が、頬つつかれて微笑むように。]