[こつこつと足音を立てて、廊下を行く。
詰襟で、裾も袖も長い禁欲的な服がなびく。きちんと折り目のついたズボンももちろん長く、その裾から革靴が覗く。
それら全ては血親と揃いの黒。髪も目も黒。
唯一、肌の色は淡く、30歳手前にしては少々童顔な顔はやや緊張に引き締まっている。
黒き夜の写し身、死の翼、乱鴉の大公、気まぐれで残酷な主……その玩具。
ただ、惜しむらくは森での苦戦により、ところどころ鍵裂きや泥汚れがついてしまっていた。
ちゃんとした吸血鬼なら、視線ひとつで修復してしまえるのだろうが、血親の気まぐれで人間らしさを多く残されたアルビンにはそんな便利な能力はない。
体力も腕力も人間並みか、それ以下だ。
ぎりぎり視覚だけは夜に馴染んで、不自由はしないでいられるが]