[最早、己の末端、なにひとつに至るまで彼のものであった。
彼が好きに扱える、彼の所有物であった。
自身の所有権が自らにないのは落ち着かないが、引き換えに、過ぎるほどのものを己は手に入れた。―――― 彼だ。>>211]
カレルレン、その眼差しに至るまで私の財よ。
君こそ、自覚せよ。自由は無く、天は無く、神の恩寵は無い。
在るのは君の主たる私だけ。
[言い聞かせるよう紡いでも、どうしても声が甘くなる。
声だけでなく、咽喉の奥にまで甘味が溜まる。
夜に咲く、ネロリの香のようだ。>>212]