貴方には、誰か大切だと思う方がいますか?
友人や家族、恋人、誰でも構いません。
[普通だと答えた男>>206に最後の問いを投げかける。
引き千切られた髪は力を失ったように地へ落ち、そのまま風に攫われていく。]
吸血鬼にだって、そういった思いを抱く者はおります。
だから私は、人間と吸血鬼の差なんて、大したことではないとも思うのです。
その感覚は、私には分かりませんが。
[同胞について語るにしては、どこか遠い響きを持った音が響く。
男にとっては人間も吸血鬼も、害を成す存在であることに変わりはないのだ。
そこにあるのはただ、無関心に近い嫌悪である。
肩を竦める動作には、侮蔑と自嘲の色が混じっていた。]