人狼物語−薔薇の下国

497 堕天の服従試験


邪眼の怪物 クレメンス

[生々しい吐息が近く、ネロリの香が貪られていく。

 彼を支える片腕は、決して膂力を発揮している訳ではないのに、巌のように動かない。戸惑いは腕の中、発した怒気さえ擁し、些細なリップノイズが節を置く。
 普通の人間種で在れば、天の怒りに触れたと知った途端、跳んで退き、罪に慄いて、罰を恐れるだろう。だが、彼を抱く老年はそのような殊勝を一抹も見せることなく、鼻先を触れあわせ、彼の眼窩に嵌る蒼穹を覗いた。]

 ……なるほど、神が後生大事にしているだけはある。
 何処も彼処も、完璧な黄金比だ。

[背を抱く五指を立て、僅かに指先が動いて彼の形を確かめる。
 受肉していない身体ながら、歪みも偏りも一切見当たらない。

 まるで、美術品でも見分するかの男は、彼の開いた唇へ軟体を滑り込ませ、罵声ごと押し返し、肉体の内から侵食。>>190
 人と接触する為に、人のように創られている天使を理解し、彼の口内で濡れた音が跳ねる。鼓膜を内側から揺らす音色は、男が立てる卑猥な触診の。]

(227) 2018/03/19(Mon) 23:51:19

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