……無闇に他者を襲って、敵意を向けられるのは面倒ね。
無駄な障害は増やしたくないし……
本当、どうしたらいいかしら。
[道中の部屋を、ひとつひとつ確かめながら考えを巡らせる。
人間が放たれている理由も得心がいき、ピースが少しずつはまるような感覚を覚えるものの、未だに脱出への糸口はもたらされない。
僅かな手がかりを探すように、更にひとつ、探索を進める為に部屋に入れば、微かに香る薔薇の香り]
この香りは……まさか。
[獣の鼻を頼りに出元を探ると、ドレッサーの引き出しに目当ての物を見つける。
薄紅色の液体で満たされた、小さなガラス瓶。
渇きを幾許か癒やす薔薇のエッセンス。
タイミングがタイミングなだけに、他者の思惑が垣間見えるようで気分が悪い。 最も、本当にただの偶然であるかもしれないのだが]