[一人海岸に佇んで眺める夜の海は昨日見たそれよりも黒く、重く、不気味な生き物のようだった。握りしめたままだった手を開けば、掌の真ん中には自身の爪がつけた赤い線が出来ている。掌をじっと見つめたまま、暫くそうしていただろう。]