[良いことはなにもない。キャンプすら遠慮したいほどだ。
冒険者としての旅の間に一生分の野宿をした気がする。
そして途中から先日まで同行していた仲間の愚痴が漏れた。
その事に気付き小さく咳払い。
視線を不自然にさ迷わせた相手には無言で胡乱げな視線を送っていた。]
クレメンスこそ望みさえすれば恋のお相手になりたがる女性は沢山いるのではと思いますが。
あら、なんでしょう?
[首をかしげて手を差し出せば、のせられたのは可愛らしい銀色のチャーム。人魚の抱える石は綺麗な桃色だ。
手の上で微かな音を立てたチャームを持ち上げ目の前で揺らした。]
可愛らしいですね。
私が頂いていいんですか?
見えるところに身に付けなくても、鞄にでも入れておけば
効果があるかもしれませんのに。
[自分には可愛らしすぎる気もしたが、好みかどうかで言えば可愛らしいものは結構好きだ。
特にチャームについた石の色が気に入り、瞳を和ませる。
店を開いてはどうかといった提案には苦笑と共に首を左右に振った。]