[クララはペーターの話しに耳を傾けていた。胸に置いた手から伝わる心臓の鼓動がやけに大きく感じた。
ペーターは何かを伝えようとするけれど必死だった。辛そうで、苦しそうで、それなのに。
顔をあげたペ―ターの目元に光る涙を見てクララは嬉しくなった。
一瞬、涙は煌めいたかと思うとすっと引いていく。
きっと涙は目の縁から零れて頬を伝っていったのだろう。]
ねえ、ペーター。そう思うなら、謝らないで。
[手を伸ばせば濡れた頬に触れただろうか。
クララは目を細めて口元を緩ませた。戸惑うような、困ったような、そんな笑み。]
うん。わたしもね、ペーターと話しがしたい。
考えたら、わたしたち。お互いの事を何も知らないんだもの。
だから、すれ違うのは当然だよね。