[無欲に振り撒かれる天使の微笑みに大地が喜んでいた。
彼の光に焦れる草木も、風も、恩寵を受けたがる欲に塗れていると云うのに。
施しと誘惑の区別のつかぬ彼は、そうしてまた吐息ひとつで誘って見せる。天の所有物だと主張して、神の膝元で幸福を浴びて。>>189
それがどれだけ、邪なる心を擽るか。彼は知りもしない。]
――― どうだろうね、
私はどこぞの龍蛇と違って天と事を構えるほど、もう血気盛んではないけれど。
しかし、鍵の無い宝物庫を前に何も覚えぬ退屈な性分でもない。
[形ばかりは彼を敬っていた筈の口調がどろりと溶けた。
滲み出すのは、淀むような悪性を孕んだ傲慢な微笑。
唇を震わせる度に、愛撫めいて彼の唇を啄み、茶化す。]