[戦乱の間隙となったとある日、彼を尋ねて一人の男が陣を訪れた。放浪の剣士であるその男は、かつてその腕を買われて彼の父に傭兵として雇われていて、その見聞の広さと人柄に惹かれて、彼が父に隠れて、密かに剣の教えを乞うた相手だった。ちなみに、父に勘当されて後の彼の言動が、多分にこの師を真似た結果であるのは余談だが]
お久しぶりです、カルロス。良く俺の居所が判りましたね。
[意外の念を押さえられず最初にそう問いかけた彼に、男は、どこか複雑な顔で、それだけ目立てば嫌でも判ると告げた]
ああ…その、すみません、俺はまだ力不足で、今はなりふり構っていられないですから、こういう、はったりも必要なんです。
[苦笑して少々言い訳じみた言葉を口にした彼は、次の瞬間、そうだ、と瞳を輝かせて師を見やった]
また俺に剣を教えてもらえませんか?今、ここに滞在してくれとお願いするのは無理でしょうが、この戦が一段落した後にでも。