[割と素早く地を蹴った、と思ったのだが。
敢えなく曲刃は阻まれてしまった。>>206]
文官にしては。
随分と良い反応をしている。
[何処か値踏みの雰囲気さえ含む言葉を放りながら、細い刀身の剣を構え、弟王子を守らんとする彼を見遣った。]
…では問おう。
“御前” の敬愛する王子はこの国を、
好きだ、愛していると言っていたが。
今の、この国に。
彼を置いておく事に何の意味がある?
彼が王子だからか?
遺書で王位継承とされていたからか?
御前にとって都合が良いからか?
[酷く喉が乾く感覚を覚えた。
「愛している」と口にした王子が、その、愛しているものに害されるような事があってはならないと思ったのだ。
望むらくは、 “自分の国を永遠に好きでいてほしい” のだ。]