― 平原南 ―
[南から攻撃を仕掛けてくる王国兵の中に、明らかに武装がまちまちの一団がいる。
あれが、義勇兵か、と目を細めた。
農民が武器を取るなど考えられないこと、と思っていたが、かつて己を助けた少年も、農民の子だと言っていた。
王国では自由民が田畑を耕し作物を育てるらしいと知ったのもその時だ。
少年とその家族の元で過ごした数日は、ゼファーでの暮らしとはまるで違っていた。
とりたてて裕福な家庭とは見えなかったが、食事には色とりどりの野菜が入ったスープが振舞われた。家の外で指導官の怒号が響くこともなく、1日の仕事を終えた夜には温かな一家団欒の光景を見た。
多少、居心地が悪かったのは、縁のない穏やかさだったからだろう。]