ー回想と思惑:悪友>>215ー
[自分は思えば平凡な人間だろう。
時が流れ。愛する妻を得て、彼女との間に息子が生まれ――息子に彼女が出来るほどの、長い巡り巡りて――。
その中で、彼の姿が変わらぬことなど、とっくの昔に気づいていた。いくら馬鹿でもそれくらいはわかる。]
なークレス。
[兄ちゃん、から″クレス″へと愛称が変わる頃。年でいえば10代の前半あたりの事だ。
その頃に自分は1つ、決意をした。一方的な約束ともいう。]
僕さ。クレスが死ぬまでは傍にいてやるよ。
だから領主頑張れよー?
[軽口で告げた、決意は今でも変わらない。この国の公安に就職したのも、この都市で勤務するためだ。
出世の道も何度も蹴って。それでもここに留まり続けるのは。長い時を一人で生きるのだろう友人を、ほんの少しの間でも1人にしたくなかったから。
息子が母の国に籍を移しても、自分はここにいる。
彼が領主である限りは。それが勝手に結んだ、約束だった。]