[淡い微笑を浮かべるシスターの心の裡は分からない>>210
ニコラスを案じて彼女が三階に上がって行ったことにも、すぐに気付けなかったほど心の余裕もなかった。
落ちつかない心地でいると、耳に落ちるペーターとシモンの会話。
無言のまま聞いていたが]
……怖いもののない人は、確かに恐ろしいかも知れないけれど。
それに押し潰されてしまった人だって……同じくらいに……恐ろしいですよ。
[シモンの言葉は正しいと思うけれど>>221
同時に誰もが恐怖を克服して、他人の力になれるほど強くはないとも、リゼットは思う。
その瞳には――忘れることなど出来ない、過去が映る]