[ シルバー・メリー号で起きた事故。
考古学者、ロー・シェンの兄の死。
その後の、長い拘留生活。
そこまでは――まだ、よかった。
船を降りてから、否、降りる前から。
不意に目醒める衝動に度々襲われた。
そうなれば自覚せざるを得なかった。
自分もまた、『ガルー』に寄生されている。
…だからといって、
激しい欲望に逆らう手段はなく。
ただただ、寄生される前と同じように
装って、偽って、生きてきた。
理性が失われる時に傍に誰かが居たら、
その相手を襲わずにはいられない――と。
自覚したのも、そう遅くはなかった。 ]