[無垢とは無知で在り、悦楽とは智慧で在る。
神とは完全なるものと天の御使いらは謳い上げるが、彼に置いては判断を誤っていた。彼のような一点の染みも無い清純な魂を下天させてはならなかった。真綿で包むように楽園に閉じ込めておかねばならなかった。
高い警戒心を持つ癖、酷く無防備で、邪悪と穢れを厭うのに自らを護る術を知らない。世のうつくしいものばかり、綺麗なものばかりで育てた天使を、欲の蔓延る地上になど遣わしてはならなかったのだ。
羽を畳んで天に留まっていれば、我が無聊の慰みにも定められなかったものを。>>187
彼は完成された無垢なる美であった。
邪な眸を悟れもせず、愛の中で愛を知らずに構築された天上の傑作。
―――― 彼は何一つとして、悪を知らない。>>188]