[ 自分たちの役目は、このゼファー兵と正面きって戦うことではない。それは救いだった。同時に呪いでもあった。「ここは一組が受け持つ。二組、三組は行け!」そんな声に押されて、王国兵の半数以上が蜘蛛の子を散らすように離れてゆく。彼らは波状攻撃の交代要員として、廃墟と化したトルーンや沿岸の森に身をひそめる算段である。伝令役は、ベリアンの元へ走った。中には、これ幸いと逐電を決め込む者もなくはない。トラウマになるほど、ゼファー兵の獰猛さは桁外れだったのだ。]