[そうして孤児院の建物へと近づく。
と、ナネッテの居室がある方角の窓のカーテンが風に膨らみ、
中の光景をちらりと垣間見せた。
ナネッテと、…――見覚えのある金髪の背姿。
しかもその金髪君、ナネッテから
ほっぺたをむにっと挟むの計をされている]
(……おや)
[ゲルトがナネッテに懐いていることは知っている。
彼がそういう部分を、一部の人間にしか見せていないことも。
だから、あ。これはまずい――と、慌てて回れ右して
そっと窓から離れた。
見ない振り知らない振り。
ゆっくり、優しいナネッテさんに甘えればいいと思う。
そういう気を許せる相手というのは、とてもとても大事なのだから]