……僕が一番好きな花はね、
―――――――― 金盞花、なんだ
[ そのまま、彼女が此方を見ないうちに
ぽつりと呟くように言葉に乗せて嘘を吐く。 ]
[ 彼女は長いようで短い付き合いの中で気付いていただろうか?
この学者は大きな嘘を吐く時ほど派手な笑みを浮かべることに。 ]
[ 気付いていたとしても、振り向かなければ
きっと見えてはいなかっただろう。
加えて、彼女と花の話をする時に必ず付け足した花言葉を
今回に限って、ロー・シェンは口にしなかった。
意味や理由を問い返されても答えるつもりはない。
金盞花の花言葉は……「別れの悲しみ」
好きな花だと言いながらも、その実、
彼女に宛てた考古学者からの離別の宣言。
ただ 込められた意味に彼女が気付くかどうかは、
……如何な学者といえど、予測の範囲外だった。* ]