― 霧がまだ晴れぬ中・上空 ―
[ドン、と衝撃が伝わる。
とても固いものに当たった時の感触だった。尾を振りぬききれず、動きが鈍る]
ずるい、なあっ。
[本当はずるいもずるくないもない。ただ、そう言うことで挫けそうな自分を引き止める。
槍が空を切る音に、ほとんど鞍から落ちかけながら体を横へと滑らせた。背中の上を通り過ぎてゆく刃の感覚。熱さを感じるのは端が掠めていったからだろうか。
氷竜も首筋近く羽を何枚も散らしながら、大きく翼を上下させた。風圧は風竜をゆるがせることはできまいが、槍を振り抜いた直後の乗り手のバランスくらいは崩せただろうか]