[窓から覗いてみて、その数と、本気の具合を見て取れば――賊を討伐に来た正規軍、というようなどこか牧歌的な図式のレベルではないことはすぐ察知できた。
かつて自分と共にあった、攻城戦に長けた歴戦の将の指揮を思わせる圧力感。
城ひとつを本気で陥とそうとする勢いだ]
にゃろ、これからだってところで……フン、取り返しに来たってかい。
シロウ! 門は任せた!
おい! おまえたち行くよッ!
得物の他に飲んでたワインの瓶携行!
階段じゃない、こっち! ここからッ!
[門を守り、土嚢が積まれるのを防ぎ、火計を阻止する――守備側が為すべきことはいくらでもあるはずである。
彼女は手下を引き連れ――この塔を奪ったときに侵入した裏手の窓から縄を降ろし、次々と出て行った。
防衛をシロウ1人に任せ、残り全員が塔の外に出る奇襲をのっけから選択した。
その即決が正しいとは限らないのだが、猪突決断に迷いがないのは美点だろうか]