オオーン!
[ 影は声を上げながら揺れ続け、揺れながら徐々にその色を濃くしていく。
不定形の影から、巨大な妖魔の姿へ……黒牛に似た体躯に尖った爪を生やし、頭部には羊のように曲がった角、その口はおよそ顔の半分以上を占め、常に食らうものを求めて、ガチガチと虎のような鋭く長い牙を鳴らしている......どこかで、その特徴を聞いたことがあったなら、四凶の一『饕餮』の名が思い浮かぶだろう。
だが、その姿は濃くなったといっても「影」のまま。濃い瘴気と強い妖力を感じさせはするが、どこか実体としての質感に欠ける* ]