あまり猶予はないぞ、人間。[言いやって、少し距離を置かんと試みる。黒い魔石が、ぱらぱらと小さな音を立てて地面に散った。] 貪欲なる 地底の顎よ[短い呪は、地面に幻影の棘を現出せしめる。ほんの瞬間現れるだけのそれは、その場にある獲物の足を貫く。棘は幻影、なれば怪我も幻影だが、その齎す痛みだけは本物だ。痛みにより、実際に怪我した如き反応を示す者すらある。この男に、そこまで期待は出来ないやも知れないが。]