[渦為すコウモリは時折人間を拾い上げながら、歩くほどの速度で街の中心に向かっていく。
戦う双子らを遠望しながら、向かうのは鐘楼の欠けた教会の方向だ。
空から触手を伸ばすように人を攫っていくコウモリの群れは、多くのものがごく最近目にしているだろう。
城の前の広場から吸血鬼を連れ去ったものだ。
気づいた民が逃げようとするのを、無造作に拾っていく。
異様なものの接近に気づいた騎士が警告の声を上げたが、直後に彼も渦に吸い上げられて消えた。
僅かな間があったのち、剣だけが落ちてくる。
またひとつ、紅が空へ昇った。]
これは……
まだ騎士が生き残っていたのですね。
[声が先に降り、コウモリたちがなだれ落ちるように集まって人の形を為していく。
黒一色の人型に色がつけば、宴の主催が端然として現れた。]