―回想:5年前・ベルサリス学館―
[どうやら見ていた事に気付かれたらしい。
>>98>>147向けられた二対の視線には目礼をし、女は静かに教室から出ていく。
ベルサリス学館の中で女は男装をしていた。
それでも女を意識させる部分を隠す事はなく、騎士団で日々稽古に明け暮れていた頃のように学業に専念していた。
性別をあえて語る事はなかったし、深く詮索せずに只受け入れる学館の気質は有難かった。
学友達に己がどのように思われているかは知らない。
別の科目を優先的に受けている昔から女を知る盾仲間が聞けば、‘こいつはじゃじゃ馬で、物静かなどとんでもない’、などと言っただろうが。
けれどじゃじゃ馬と言われていた勢いは夫を失った事で鳴りを潜め、知識を得ようと静かに教師や生徒達の話に聞き入っていた。
そんな中、時折頭を過るのは、夫や騎士団の今後について。
胸の裡に静かに燃えるのは、何としても国を守っていく、という強い意志。]
――マッキントッシュ先生。