…… 貴 様、
[手を上げたのは、さてどちらが早かったか。
切欠はささいなこと、山賊の風習そのままに過ごすクマへと男が幾度めかの注意を行った直後のことだ。
面倒だとばかりに投げ捨てられたジョッキ、向かい来る拳に男もまた、拳で応じた。
巨体のクマに比べてみれば、男の身体も些か小さい。
それでも負けじとばかりに拳を交わし、互いに殴りあって如何程か。
幾分ふらついてきた拳を受けながらも返した拳が、クマの腹を捉えたように記憶している。
ぐうと声を上げて倒れた巨体、それが地面に伏したと見る間もなく、重なり合うようにして己も倒れた。
次に互いの顔を見たのは、並べられ横たえられた寝台の上である。]