クロード君は、古い因習を破壊するのだと主張しているが、彼よりも先に、シルキーが破壊してしまった。
"万人のために豊穣を祈る巫女姫"という偶像を。
シルキーは戦場に立ち、武をもって、決起した民を否定した。
もはや、彼女にとっては、反乱兵は国民ではなく、死んだ反乱兵にしかその慈愛は向けられぬのだよ。
また、彼女は迎え撃つという名目はあれど、首都を空けて出陣した。
首都に残された者たちの中には、自分たちは捨てられたのではと危機感を覚えた者もいる。
「此の国の皆様が、心健やかに、四季世豊かにあることが、私の心からの願い」
そういう無垢な存在だった巫女姫が、触れてはいけなかった存在が変化している──違うと気づいた民衆がどう反応するか、おれにも予測がつかない。
ただ、貴卿は彼女を守る力を持ち、かつ、彼女を守る利を知っている。