[途端、右腕に風の力を集め、制御に難のある腕が揺れる。
奥歯を噛み締め、上り来る痛みと熱に眉を顰めた。
掻き集める力は、どうしても千々と零れ、
意識に対し、出力が下がる。
だが、不調に構わず力を一気に解き放った。
それは二度に渡り、城を破壊したものではなく、
己の身体を風の障壁で包んで戦局から離脱するもの。
大きく飛びのくと、一度、黒き獣を睨みつけた後、
聖女の光を目指して駆け出した。
金色の長い尾が、軌跡を描き、靴音が高く響く。
聖将の背を追いかけようとも、己の従者がそれを拒むか。
―――彼が失った絆と似た、
剣と将の絆をありありと見せ付けるように。]