― 幕間・騎士団出撃後のペンホールズ ―
[突然の降伏勧告は、都市に残るものにも少なからぬ動揺を呼ぶ。
あくまで騎士団に信向ける者と、勧告に揺らぐ者。
様々生じるは、人の性と言えようか。
そして、対極に意識振れた者同士が様々な形でぶつかり合うのもまた流れの在り方、ではあるが]
『……ばっかじゃないの、あんたたちっ!』
[威勢のいい声と共に、高まる不安から口論になった男たちの頭に箒の柄と木桶が落ちる。
声の主──街頭の不穏な落書きを掃除に行くんだと言い張り、夫を振り切って行動に移したリンドブルム家の長女はぽかん、とする周囲の様子にも構わず、仁王立ちになって諍いを始めていた男たちを見下ろした]