──── 独り言 ────
[ 黒服の男に連れていかれてから数日。
蒸し蒸しした部屋には入れられていない。
ここに来てから人には会うものの会話はなく
1日に1度運ばれる食事を口にしては
砂埃と蜘蛛の巣だらけの大きな倉庫を掃除する。
たまに倉庫の小窓から外の景色を眺めては
眩しそうに目を細め、そこに広がる砂の大地と
どこまでも続く青い空に目を輝かせた。
地面の下で暮らすことが多かったため
太陽の光すらまともに見たことがなかった私には
何もかもがキラキラとして見える。
ここの環境だってとてもいい。
食事がもらえない日はないし
理不尽な暴力もない。
ここに何があるのかわからないけど
気にしなければ十分に睡眠がとれる。
ずっとここにいられるのなら────
そんな想いは確かにあった。
けれど、ここにいられるのもあと僅かだろう。
船に、乗るのだから。
命令は絶対。
拒否することも反くことも許されない。 ]