―移動中―
[ずっと肘と手がくっついているせいか、
近い距離感にも慣れて照れが消えて行き、緊張も薄れる。
気付けば、学校にいる時よりも自然体で接していた。
歩幅を合わせているつもりがなくても先に行き過ぎたり置いて行かれるということがなかったのもあるか。
お昼時ともなるとあちこちから空腹を誘う香りが漂う。]
ん、そうだな。腹減った。
でもこれだと入る店、選ばないか?
[提案にはくい、と軽く肘を引いて現状を再確認。>>198
箸は到底掴める気はせず、スプーンやフォークを使う洋食ならば左手でも大丈夫そうだが折角の京都だというのに風情がない。
最終手段のファーストフード店で、と考え始めた辺りで何かを見つけたのか指を差した先に視線を移す。
すると大きなタコの描かれた、たこ朗という看板が目に入った。
ちょうどたこ焼きを嬉しそうに持ち帰る客が横を通り過ぎ、朝ろくに食事を入れられなかった腹が空腹を盛大に訴える。
ぶらさげられた餌に食い付き頷けば、綻んだ顔に頬を緩め。
そんなに腹減ってたのか、と繋がっている肘を掌で軽く叩いた。機嫌の良さが目先の食事のせいだけではないのは、自分もだった。]