―エルナへの手紙―
君がこの手紙を読んでいるということは、おそらく僕はもう死んでいるのだろう。
約束を果たすことが出来なくて済まない。
僕は君の笑顔と明るさに随分と救われたし、旅から帰る標だった。きっと、皆の事も元気づけてくれるだろう。だからどうか、その笑顔を忘れないで、生きて幸せになって欲しいんだ。
ひとつ、伝えておかなければならないことがある。
僕には、獣に取り憑かれた人間と、そうでない人間が、全てではないけれど視える力がある。
……黙っていて済まなかった。だけどそれを口にしたら、きっと、僕も彼も異端者として裁かれてしまうような気がして、誰にも言えなかった。