[俺の方は名前と肩書きは勿論、頭に入っている。
“人については” 色々と情報もあるが、それでも会った事のない人は当然の如く存在する。
だから、名前を覚えていない、という反応はある意味不思議でもなんでもなかった。>>206]
はは、私如きの名でしたら、
忘れてしまわれても仕方のない事です。
…はい、諜報者の一角、ソマリです。
ですが、本日は一介の鷹匠として。
先王様に餞けをと、思ったものですから。
[名を忘れた、という言葉に機嫌を損ねるでもなく、俺はそう言って返す。
その手にあったのは、一見ただの金細工。
花を見繕い、束ねたものに隠れるようにそれを持っていた。]