――宿屋・受付前>>212リヒャルト
[立ち尽くしていれば、相手がゆっくりと視線を上げて――目が合った。>>213]
『エレオ…ノー、レ……?』
……ぁ……。
[名前を呼ばれ、しっかりと見つめられてしまえばやはり人違いではなかったと気付く。
それと同時にどうしてさっさと立ち去らなかったのかと自分で自分が嫌になってしまう。……相手は、こちらに気付いていなかったというのに。
あのパーティーにいた時、仲間たちからは鈍くさいだの期待外れだの散々言われたが、彼だけは違った。
それが営業だったとしても、本心からの言葉じゃなかったとしても、あのパーティーにいる間励ましの言葉をくれたのが嬉しかったことを覚えている。それでも嬉しいという気持ちを、明るい笑顔で表現することができなくて。
『もう来なくていいですよ』と面と向かって言われた時にも。
――わずかに、悲しげに瞳を揺らしたのみ。]