―回想と思惑:旧友―
[先代を亡くした直後に指名を受けて、クレステッドは領主となった。
その頃はまだ、自由自治権を取得したばかりのこの領は主国との外交関係にも頭を悩ませることが多かった。
今でこそ評判はいいが。
成り立てで――一部ではどこの馬の骨かわからないと陰口を叩かれることも多かった。
しかし。銀髪の男は領主に継がなければならない理由がその時にはあった。
たった一人の血の繋がらない親とも呼ぶべき先代を喪い、事情を知らない周囲から冷たい目で向けられていた時だっただろうか。
ふらり。気紛れに足を向けた町で、犬を連れた少年がひとり。
犬に引っ張られている姿がおかしくってつい腹を抱えて笑った。]
あはは! 少年!
それじゃ、どっちが散歩されてるかわからないぞ〜?
[はっきり言おう。大人としてどうかと思う発言である。
これが――今や悪友でもあり親友でもある、タクマ=シュペヒトとの出会いであった]