[ まさか件の"黒い箱"が当時の船にも
持ち込まれていたとは気がつかなかった。
当時あれを運んでいた配達屋の顔すらもう覚えていないし
……いっそ、思い出さない方がいいのかもしれない。
黒い箱は多くの研究資料を中に入れることが出来る。
遺跡の中で見つけた石の欠片でも、草花の一部でも
…人に感染するような危険な寄生生物でも。
それそのものの機能を損なわずに持ち運ぶことが出来る。 ]
[ 数年前に起きた事故は、
配達屋の運んでいた黒い箱の中身が流出し
それに感染した兄が弟である自分を殺そうとした
…というのが記録に残されていない真相だった。 ]
[ 船の中でも特に限られた人間にしか通達されなかった話。
…未来のある学者が"兄を殺した"などと、
スキャンダラスな話題が流れては困るから。
不運な事故だった…として、処理をしてもらったのだった。 ]
[ 苦い記憶は配達屋への苦手意識に変わって未だに残っている* ]