[カメラ片手に、春の日差しに誘われてまるでふらっと散歩でもするかのような足取りで歩くのは異人館道を行くのは
白いシャツに赤いネクタイをゆるく締め、チャコールグレーのベストを羽織り、ブラックジーンズを履いた青年。
その傍ら、一羽のハヤブサが青年の歩調に合わせた速度で飛行しているけども、普通の人間にはそれを視認など出来はしない。
たまに立ち止まってはシャッターを押し。
森を抜けていけば、たどりつくのは一軒の異人館。
観光客らしき姿が幾人かちらほらと見えた。]
おー、ネットで見た写真よりも、実物のがずっと立派な感じだね。
確かに……試練、なんて舞台が似合いそう。
『そうなのか?
ふーむ……私にはそういうのはわからんね。』
[不思議そうな声のハヤブサに、青年は言葉を返そうとするけども、すれ違う観光客の視線に気づいてはっと口を噤む。]