[暗い中へ意識が落ちてゆく中、浮かぶ記憶は柔らかに暖かく、まだその時は光を帯びていた。] 『お父さん、この木は何て言うの?』 『この木は……ええと、何だっけかな。』 『もう。あ、見て。ここにお名前が書いてる。ひいらぎさんだって。』 『そうだそうだ、柊だ。こんな白い花を咲かせるんだなあ。』[それに他にも例えばそう、掃除や料理をしている時の記憶だとか、部屋に飾ってあるぬいぐるみの事だとか。 そんな散漫なことばかりが浮かぶ……走馬灯、のようなものだったのだろうか。]