>>203
― 茶会の間 ―
[言の葉が帯びたニュアンスには気づかない。気づいたとして、若輩ゆえの自負心の発露に咎めるつもりも少女には無かった。
宵闇に行われる暗闘の舞台からも身を引いて久しいのだから。]
[ただ、代わりに口にしたのは。]
――ああ。ひとつ、思い出したわ。
我が“子の子”――つまり、貴女の“父の父”、ね。
[“父”というのはあくまで慣習的な語法にすぎない。
その姿を思い浮かべた吸血鬼は、女性だ。それも――]
どれほど過去の事だったか、もう全く定かではないけれど。
彼女は、奇遇なことにね。
貴女にそっくりな容姿の娘だったのよ、シルキー。
[そう告げて、うら若き同族の少女にそっと寄り添った。**]