― 回想:戦場 ―
[彼が落馬しなかったのは、偏に馬のおかげだ。普段無茶な乗り方ばかりしている効用と言えば言えるかもしれない]
やって、くれるじゃねえか、よ!
[しかし、肉離れか何かを起こしたらしい利き腕は、すでに動かすのも困難で、何とかツヴァイヘンダーを馬の鞍に括った皮紐に戻し、左手で、白兵戦用に携行している短剣を抜きはしたものの、まともに応戦出来る状態ではない>>202]
っそっ…たれ…うあっ!!
[レイピアを手にして迫る相手の切っ先が喉元狙うように突き入れられても避けきれず、傷めた腕の付け根に更に傷を受ける羽目になった]
きしょ…
[逃げるべきだ、と、彼の頭の中では理性が叫び続けている。けれど、逃げ切れるのか?と、別の何かが問いかける]