― 15年前・貧民街 ―
[自分よりも年下の濃い金髪の幼年とも少年ともつかぬ彼を誘って
平民街の方へ食べ物を漁りに行った時の事だった。
飲食店の裏、残飯を漁っていると表通りが随分と賑わっている事に気づく。
どうやら街に雑技団が来ているらしい。
見に行ってみようと少年の手を取り、雑踏の中に紛れ込んだ
広場で柔軟な肢体が軽やかに跳ねるのを二人、眺めた後の帰り道。]
ねえ、あれに似たことオレもできるかもよ
[悪戯っぽく笑い、捨てられていた鞠を取る。
鞠を片手に塀の上に乗り上がり、球体を使った演舞を見せた。
足元の覚束無い場所で軽快に遊ぶ様は、彼の目にはどう映ったのか。]
[その日の帰り道、少年はパンを拾ってくると告げたきり姿を消した。
その実は塀上の舞をとある貴族に見初められ、攫われたという。*]