ー 3日目、メイン・サロン/セルウィンがサロンへ戻る前 ー
[展望ラウンジでラヴィに”おつかい”を頼んだ男は、同じくメイン・サロンにあるレストランの厨房へと移動していた。
別にお腹が空いて食べ物を探しに来た訳ではない。
何か、使える物がないか探しに来たのだ。]
(ちっこいナイフでいいんだがなぁ……)
[探しているのは、得物になる物。
丸腰でもそれなりには立ち回れるけど、それではクレメンスと相対した時に死神が相手から逃げ出そうと体の支配を奪う可能性があるのだ。
死神は、リスクのあり過ぎる状況での殺し合いはしないから。
但し包丁はダメだ、殺傷目的で使用される刃物程ではないが充分過ぎる殺傷能力がある。
同様の殺傷目的関係の理由で武器庫に向かうという選択も排除していた。
得物を持つのは、あくまで死神が逃げ出さぬよう”誤魔化す”為なのだから。]
………おっ、これ果物ナイフか?
[男が調理器具の収納スペースから見つけたのは鞘付きで9cm程の小さな果物ナイフだった。
これなら鞘があるし懐にしまって持ち運びも可能だろう。
そうして目的の物を手に入れた男は、去り際にちゃっかり林檎を1つ拝借しレストランから出て
そのままメイン・サロンから第2エリアの自室へと移動した。
もう目の異常はないけれど、少しだけ休んでおきたいなと思って。*]